【読本天国】『西遊草』


『西遊草』 清河八郎

 新選組の前身、浪士組を組織したうちのひとり、清河八郎の著作です。

 清河は庄内(山形県)の尊攘派志士で儒学者でした。
 安政二年、母を連れてまず善光寺へ参ります。そこから伊勢参り(いわゆる抜け参り)をし、さらに京都・大坂、四国、広島は安芸の宮島などを回り、東海道から江戸へ出て庄内へ帰るという、ちょうでっかい親孝行をいたしました。

 この清河、もともとたいへんな筆まめで、彼がほうぼうに出した長〜い手紙がたくさん残っています。
 そんな彼ですから、旅行に関しても事細かに書き残しておりまして、宿に泊まれば宿の名前や何を食べていくら支払ったとか、史跡を巡ればその歴史や現状、自分が抱いた感慨などを毎日毎日書き綴っていました。

 これは自分のための備忘録という意味合いだけではなく、同行した母がこの記録を読んで後々に思い出せるようにという思いもあったそうです。

 旅の途中で出会った人々についても丁寧に描いています。
 夜の数だけ宿に泊まるわけですが、その主人や使用人の人柄などを、いい人だとかケチだとか赤裸々に語っていたり、偶然道中で出会った旅の人たちとのハートフルな交流を残したりしています。

 道中の景色や旅でのアクシデント、女性を連れて関所をどう攻略したかなど、当時の長旅を知ることも出来、面白かったです。

 また、内容を通して清河の人物像も浮かび上がってきます。
 抜け参りという危険を犯してでも母を伊勢参りに連れて行く、善光寺まで一緒に連れて行った叔母を何とか伊勢まで連れて行こうとする、道中行き倒れ寸前になっていた江戸へ帰りたい男を荷物持ちとして同行させるなど、なかなか情に厚いところがあります。正当なサービスを受ければどんどん金を払い、逆であれば金は仕方なく払うけど文句たらたらだったりです。

 浪士組を組織し上京させるもすぐ江戸へ引き返してしまい、江戸で斬り殺されてしまった清河は、何かと評判が悪い。でも私はこの本を読んで、清河が言われるほどの極悪人ではないと思いました。誰もが個別に持っている正義、その価値観の違いで不幸な結末になっただけだと思います。

 ちなみに、西遊草は複数冊出版されているのですが、上記画像のものは現代語に訳してあり、ところどころに解説もあって読みやすかったです。原文の書き下しで清河の文体を感じたい方は、別の本をどうぞ。

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小山奈鳩

Author:小山奈鳩
時々江戸時代(主に幕末)へ暴走します。

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